敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 殿下に連れてこられたのは、整然とした王宮前庭とは趣の違う、可愛らしい庭だった。花々と緑が揺れる庭はこじんまりとして素朴で、とても居心地が良さそうだった。
「なんて可愛らしいお庭。……まぁ、あちらにはガゼボまで」
 八角形の瀟洒なガゼボを見つけて頬が緩んだ。中には座り心地に良さそうな籐の椅子が四脚あり、やわらかそうなクッションが置かれていた。備え付けのローテーブルにも真新しいクロスが敷かれている。
 殿下のお祖母様が使っていたと考えれば、外装も中の調度も不思議なくらい手入れされていた。
 ガゼボの様相に首をかしげていたら、殿下に話しかけられた。
「君は祖国で植物を育てていたと聞いている。東の庭には奥に温室もある。よかったら、君が使ってくれ」
「よろしいのですか?」
 破格の申し出に、自然と声が弾む。
「あぁ、今度庭師も紹介しよう。必要な物があればその者に言うといい。人手が欲しい時は手伝わせたら……いや。人手が欲しい時はまず俺に言ってくれ。時間を作る」
「え?」
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