敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
そんなに忙しい中、わざわざ私に時間を取らなくていいのに……。喉まで出かかったけれど、ちょうどその時一陣の風が吹く。髪がふわりと風に舞い、ひと筋が顔にかかった。
私が髪に手をやるよりも先に、殿下が腰を抱くのと逆の手で掬い取って耳の後ろにかける。まるで離すのを惜しむように節のある長い指でサラリと梳ってから、手はゆっくりと離れていった。
親密すぎる殿下の態度にびっくりして、口にしかけていた言葉が吹き飛んだ。唇は声のないまま、パクパクと開閉を繰り返した。
「髪のひと筋まで奇跡のように美しいのだな」
殿下の小さな囁きを聞いた気もするけれど、頭が沸騰したみたいになっていて碌に耳に入らなかった。
ひとしきり動揺が収まってくると、周囲の様相に違和感を覚えた。殿下は迷いのない足取りで、綺麗に整えられた歩行路を進んでいるが……。
「あの、庭に行くのですよね? 王宮前の庭園はあちらでは……?」
「これから向かうのは東の庭だ。王宮の東側に亡くなった祖母が造らせた庭がある」
私が髪に手をやるよりも先に、殿下が腰を抱くのと逆の手で掬い取って耳の後ろにかける。まるで離すのを惜しむように節のある長い指でサラリと梳ってから、手はゆっくりと離れていった。
親密すぎる殿下の態度にびっくりして、口にしかけていた言葉が吹き飛んだ。唇は声のないまま、パクパクと開閉を繰り返した。
「髪のひと筋まで奇跡のように美しいのだな」
殿下の小さな囁きを聞いた気もするけれど、頭が沸騰したみたいになっていて碌に耳に入らなかった。
ひとしきり動揺が収まってくると、周囲の様相に違和感を覚えた。殿下は迷いのない足取りで、綺麗に整えられた歩行路を進んでいるが……。
「あの、庭に行くのですよね? 王宮前の庭園はあちらでは……?」
「これから向かうのは東の庭だ。王宮の東側に亡くなった祖母が造らせた庭がある」