敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 真っ白な頭で、なんとか絞り出すように口にする。殿下はまぶしいほどの笑みを残し、ヒラリとマントを翻して颯爽と歩き去る。
 殿下の背中が見えなくなった後も、駆け足の鼓動はなかなか落ち着いてくれなかった。
「……いけない。すっかり言いそびれてしまったわ」
 少ししてはたと思い出してつぶやいた。
《どうした嬢ちゃん? いったいなにを言いそびれたって?》
 サラマンダーがスッと現れて尋ねた。
「ドレスを用意していただいたのに、お礼を伝えるのを忘れてしまって」
《もしかして今着てる可愛いいやつがそう?》
 シルフが姿を見せて、目をキラキラさせながら小首をかしげる。
「ええ、これも殿下が用意してくださったうちの一枚よ」
《ほぅ、嬢ちゃんによく似合っておる》
 ノーム爺が口もとの皺を深くして褒めてくれる。
「ありがとう、ノーム爺」
《たしかに。少々癪ではありますが、髪留めから靴までなかなかいい趣味で揃えていますね》
 ディーノも私の頭の先から足先まで眺め、少し皮肉っぽい笑顔で言った。
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