敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 有能なアニータが説明をし忘れたくらいだから、さほど重要なものではないのだろう。それでもなんとなく気になって、吸い寄せられるように扉に足を向ける。
 ランプを持つのと逆の手でドアハンドルを引く。
 ……あら? 明るい?
 薄く開いた隙間から漏れる明るさに首をかしげながら、そのまま扉を開ける。
「えっ? 寝室!?」
 目の前にドドンと鎮座する大きな寝台に驚き、パチパチと瞬きを繰り返す。
 予想外の光景にしばし固まった後、おそるおそる室内に足を踏み入れて見渡した。どうやら私が宛がわれた部屋と間取りが対になっているらしい。ただし室内は一切飾り気がなく、家具や調度は私の部屋にある物の方がよほど華々しい。
「ここも客間かしら。いったい誰の……?」
 空室かとも思ったが、室内各所には使われている気配がある。質実な様相から、なんとなく男性の部屋のような気がした。
「って、そんなことはどうでもよくて! 客間同士が奥で繋がってるって、おかしいいわよね!?」
 二室の構造の異常さにはたと気づいて叫んだ。
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