敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 気まずい沈黙を打ち破ったのは、俺のもっとも信頼する側近であり、乳兄弟でもあるハウイットだった。
「はい」
 俺が指示し、姫の輿入れ旅にハウイットを急遽同行させた経緯があった。祖国からずっと旅程を共にし、打ち解けた関係のハウイットに促され、姫はホッとした様子を見せた。
「それではジークフリード殿下、後のことは私が」
姫を伴ったハウイットが短く告げる。人当たりのいい貴公子然とした奴は、その実かなりの食わせ者だ。
澄まし顔の下で俺の窮状を面白がっているであろう乳兄弟に言いようのない怒りが湧くが、この場はうなずくことで応える。
 姫の小柄な後ろ姿は大柄のハウイットの体躯に隠れ、見えなくなってしまう。苦々しく遠ざかるハウイットの背中を眺めながら、ギリリと歯噛みした。
 情けないが、俺はたしかに姫との始まりを間違えたのだ。
 ……だが、すべてはこれからだ。姫の信頼を、そして愛を勝ちうるために、ここからが俺の正念場。幸運にも姫は俺の手中にある。
 誠意を尽くし、姫の心を動かしてみせる──!
 取るべき今後の行動を定め、きつく前を見据えた。
< 8 / 265 >

この作品をシェア

pagetop