敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「君は昨夜、俺に触れられるのは嫌ではないと言った」
 私の憂慮をまったく意に介さない殿下に焦燥が募る。
「そ、それはたしかに言いましたが……。そういうことではなくて、私と殿下の関係について周囲に誤解を与えてはいけませんから」
「構わん。俺は君とこのまま手を繋いでいたい。それより、雲が出てくる前に行きたい。少し急ごう」
 言うが早いか殿下が掴んだ手をグッと引き、足を速める。
「あっ」
 こうなるとそれ以上四の五の言う余地はなく、私は彼の歩みに付いていくのがやっとだった。

 厩舎に着くと、殿下は慣れた様子で馬房から一頭の馬を出してきた。
 あら、この子は……!
「俺の相棒で、ランロットという」
「え? この子は殿下の馬なのですか?」
 おかしいな。額に三日月のような模様の入ったこの馬は、間違いなく輿入れ旅で鎧の騎士様が乗っていた馬だ。彼が丁寧にブラシをあて、よく世話していたのを覚えている。
「あぁ、俺の馬なのだがこの数日は訳あって人に貸し出していたんだ」
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