逃すもんか

田村家へ到着すると玄関まで昇太〈しょうた〉くんを抱っこして出迎えてくれた。

「いらっしゃい大崎くん!お久しぶり〜。元気だった?」

「はい。今日はお言葉に甘えて、夕飯をご馳走になりにきました! 
これはデザートに食べようと思ってケーキです。」

「ありがとう! 
アレ?これって有名なケーキ屋さんのだ〜!
わぁ嬉しい。ありがとう。さぁ、中へ入って〜」

「はい。お邪魔します。」

田村さんと手を洗ってからリビングへ。

ベビーラックにいる昇太くんを田村先輩が
「しょ〜た〜。ただいま。良い子にしてたか?」と
高い高いした。
ケラケラ笑っている昇太くん。

「大崎くんも昇太抱っこしてみる?」

「え、オレですか? なんか小さく怖いけど、どうやったら…」

「じゃあ、手をこうして〜そう。いい、昇太を横向きにするよ。そう。こっちの腕を昇太の首の下になる様に… ハハ。大崎くんがロボットみたいになってるぅ」

「落としたら大変だし…」

「お茶持ってきたよ。昇ちゃん、大崎くんに抱っこしてもらって良かったねえ〜」

「いや〜京香さんもうオレはギブです。
昇太くんもいつもと違うから変な顔してますし」

「ハハ。うん昇ちゃんママが抱っこするね〜」と
ぎこちないオレから昇太くんを抱っこしてくれた。

リビングでお茶を飲みながら、オレは京香さんに
「京香さん、オレやっと先生から上級コースのOKが出たんですよ」

「お〜!良かったね。おめでとう。
じゃあ今日はお祝いだね。」

「いや〜これも田村先輩と京香さんと一緒に教室へ通ったお陰で、続けて頑張れました。
田村先輩、京香さん、本当にありがとうございました。これからも上級コースで頑張ります。」

「おめでとう。これからも頑張ろうな。」と田村先輩は微笑んだ。

「大崎くんが一生懸命に勉強するから私も頑張れたんだよ。本当にありがとう。
そして、これからもよろしくね!」

「ハイ! こちらこそ宜しくお願いします」と史弥もお辞儀をした。


田村先輩に出会えたからフランス語やブランドバックの職人を目指す夢が持てた。
だから俺は、田村先輩のことを俺の人生の恩人だと思っている。

温かく優しい田村夫妻。
本当にありがとうございます。
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