霊感御曹司と結婚する方法
 ある日、見知らぬ番号から電話が掛かってきて、無視をしていたのだが、その日以降、繰り返し掛かってくるようになった。

 それで、何日か経ったある日、つい、何も考えず出てしまった。

「やっと出たわね」

 低い女の声で、心臓が止まるかと思うくらい驚いた。

「こっちは、あなたが誰だか知って掛けているのよ。神崎蒼子さん」

 さらに、もっと奇妙なことを言った。

「向井俊夫さんのことでお話がしたいの」

 電話先の女は、日時と場所を言って、私に一人で来るように言った。こちらの都合は全くのお構いなしだった。

 日時は平日の午後。場所は、有名ホテルのカフェテリアだった。無視をするには、具体的すぎて気味が悪すぎる。行かなかったら、たぶん、また掛かってくる。

「午後から休みを取りたい? もちろんいいが、何かあるのか?」

「えっと……、友人と待ち合わせ、……です」

 気味の悪い、電話先の女を友人というのは嘘でもためらわれた。

「どこだ? 送ってやるよ」

 初めて行く場所だったので、確認のためにホテルの名前を言ってみた。

「そこなら、在来線の駅に直結のはずだが、車だと……」

 吉田さんが、遮って言った。

「午後から遠城さんが来るけど」

「そうだった。悪いが一人で行ってくれ」

「最初からそのつもりですから……」
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