霊感御曹司と結婚する方法
「あなた、エムテイの元社員なのよね? そうであれば、糾司がエムテイの社長の息子なのは知っているのよね?」

 私には寝耳に水な話だが、驚きを目の前の女に悟られないように堪えた。

「彼に婚約者がいることを知ってのことよね?」

「……婚約者?」

「やっと食いついてきたわね? そうよ。彼、結婚が決まっているの。近くね」

「……知りませんでした。全く。婚約者って、あなたが、そうなんですか?」

 それは無いと思いつつ、恐る恐る聞いてみた。

「そんな訳ないでしょ。私は彼女の代理人。正確には彼女のご家族のね」

 彼女はうふふと機嫌良さそうに笑ったが、すぐ真顔になって言った。

「本当に知らなかったの?」

 そう言ってから、唐突に彼女は封筒を私の方に差し出した。

「なんですか?」

「手切れ金」

 手切れ金も何も、彼とは恋人同士でもないし、一緒に住んでもいない。でも、この女に事情を説明するのも違うと思うので、話を合わせておいた。

「……そんなことされなくても、私は彼の家から出ていきますから」

「でもあなた、お金に困っているんじゃないの? それ、三百万入っているわ」

 女は得意げに言った。

「……大金過ぎませんか? 手切れ金にしては。金額の根拠は?」

「向井俊夫さん……、というの? あなたの亡くなった元彼氏さん。あなた、彼と不倫していて、数ヶ月前、そのことで示談金を支払ったんでしょう? あなたが失ったお金を補填してあげましょうって意味よ」

 何で、その話と思うが、それより、なぜこの女からその話が出るのか。でも、それをここで彼女に追求するのは得策ではないと思った。

 目の前の女が、さらに続ける。

「その彼が、妻と別居していることをいいことに、あなたは、彼の病気につけ込んで誘惑して、あげく大金を貢がせてたって聞いたわ」

 すごい言われようである。

 本当にそんなことを何処かで言われていたんだろうかと急に不安になった。

「あなた、男も知らないような顔をして、やることはゲスなのね。糾司はお坊ちゃんだから、何もわかっていないのよ」

「村岡さんは私のことは何とも思っていないです」

「そんなのはあたりまえでしょう? こっちが気にしているのはね、あんたみたいなゲスな女に糾司が一時でもうつつを抜かしているって、取引先に知れたら、信用問題につながるってことよ。例え遊びでもね」

 なるほど、そういう見方もあるのかと何処かで感心している自分がいた。

「でもね、こっちはなるべく穏便に済ませたいの。糾司の目を覚まさせるために、彼も婚約者の彼女も傷つけたくないの。未来ある二人のためよ」
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