霊感御曹司と結婚する方法
村岡さんの祝辞だ。
彼もまた慣れた感じで、大勢の人前でまったく動じない堂々とした姿を披露していた。
「今日ここに立って話をするのは、僕ではなかったはずで、その本来ここに立つべきで、それがもう叶わない彼が言うだろうと思うことを、僕が代わりに述べたいと思います。
少し前に突然亡くなった僕の兄のことです。
先に僕と兄との関係を言っておくと、兄は、エムテイ商会の現会長の、死別した前妻の息子で、僕の異母兄にあたります。
歳は僕と十五ほど離れています。……まあ、彼の時間はもう進まないので、離れていたといったほうが正確でしょうか。
とにかく出来が良い兄で、家族も親族も誰もが兄のことをいつも頼りにして、そして血縁にいる兄という存在を誇りにしていました。それらの期待を一身に受けて、兄が無理をしていたとか、何かを抱え込んでいたということも当然なかったわけです。
兄がどれくらい凄い人間か例えるなら、世界に終末が訪れて、全ての地位や財産を突然失っても、彼なら難なく同じ立場を再び手に入れるにちがいないと、彼を知る誰もに思わせるところでしょう。
とにかく兄は、頭がいいだけでなく、人間的な魅力も合わせ持って、誰もが彼を慕い、頼りにして、彼のほうは、それを受け止めて、問題があれば解決以上のことをして返すというような、なんとも大きな懐の持ち主です。
弟の僕から見て、そんな兄に足りなかったものを強いてあげるとするなら、家庭に恵まれなかったことだったと思っています。
病気の母親を多感な時期に亡くして、そのことが原因で父との関係も、しばらくいいものではなかった。そして、自ら持った家庭も、また円満なものにはならなかった。
周りからは完璧に見える兄が、理想としていた人物像があったとしたら、そこに座る吉田じゃないかと僕は思うんです。
吉田は僕の兄の素顔を知る、数少ない人間の一人です。
吉田と僕は中学から高校を出るまでの同級生でした。吉田はあの進学校にして、常に五本の指に入る成績を維持していた。兄もそうだったらしいです。僕からしたら二人はよく似ていると思っています。
僕は初めて吉田に出会ったときに、友達になってもらいました。その縁で、僕の家族とも顔見知りになって、兄と顔を合わせるようになった経緯があります。
兄も吉田を随分と気に入って、とても目を掛けていた。弟である僕以上に。毎年の休暇には必ず彼を別荘に招待していたし、単に僕の友人だからということではなかったはずです。
僕は高校を出て、海外に行ったから知らなかったことですが、その後も兄と吉田の交流は続いていて、兄は優秀な彼を口説き続けて、会社に引き込むことに尽力をしていたと言います。
実は、弟の僕より、兄は吉田と過ごした時間の方が随分と長い。だから、その分、兄を亡くした悲しみは吉田のほうが遥かに深いはずだ。その悲しみも、当分癒えることはないと思う」
彼もまた慣れた感じで、大勢の人前でまったく動じない堂々とした姿を披露していた。
「今日ここに立って話をするのは、僕ではなかったはずで、その本来ここに立つべきで、それがもう叶わない彼が言うだろうと思うことを、僕が代わりに述べたいと思います。
少し前に突然亡くなった僕の兄のことです。
先に僕と兄との関係を言っておくと、兄は、エムテイ商会の現会長の、死別した前妻の息子で、僕の異母兄にあたります。
歳は僕と十五ほど離れています。……まあ、彼の時間はもう進まないので、離れていたといったほうが正確でしょうか。
とにかく出来が良い兄で、家族も親族も誰もが兄のことをいつも頼りにして、そして血縁にいる兄という存在を誇りにしていました。それらの期待を一身に受けて、兄が無理をしていたとか、何かを抱え込んでいたということも当然なかったわけです。
兄がどれくらい凄い人間か例えるなら、世界に終末が訪れて、全ての地位や財産を突然失っても、彼なら難なく同じ立場を再び手に入れるにちがいないと、彼を知る誰もに思わせるところでしょう。
とにかく兄は、頭がいいだけでなく、人間的な魅力も合わせ持って、誰もが彼を慕い、頼りにして、彼のほうは、それを受け止めて、問題があれば解決以上のことをして返すというような、なんとも大きな懐の持ち主です。
弟の僕から見て、そんな兄に足りなかったものを強いてあげるとするなら、家庭に恵まれなかったことだったと思っています。
病気の母親を多感な時期に亡くして、そのことが原因で父との関係も、しばらくいいものではなかった。そして、自ら持った家庭も、また円満なものにはならなかった。
周りからは完璧に見える兄が、理想としていた人物像があったとしたら、そこに座る吉田じゃないかと僕は思うんです。
吉田は僕の兄の素顔を知る、数少ない人間の一人です。
吉田と僕は中学から高校を出るまでの同級生でした。吉田はあの進学校にして、常に五本の指に入る成績を維持していた。兄もそうだったらしいです。僕からしたら二人はよく似ていると思っています。
僕は初めて吉田に出会ったときに、友達になってもらいました。その縁で、僕の家族とも顔見知りになって、兄と顔を合わせるようになった経緯があります。
兄も吉田を随分と気に入って、とても目を掛けていた。弟である僕以上に。毎年の休暇には必ず彼を別荘に招待していたし、単に僕の友人だからということではなかったはずです。
僕は高校を出て、海外に行ったから知らなかったことですが、その後も兄と吉田の交流は続いていて、兄は優秀な彼を口説き続けて、会社に引き込むことに尽力をしていたと言います。
実は、弟の僕より、兄は吉田と過ごした時間の方が随分と長い。だから、その分、兄を亡くした悲しみは吉田のほうが遥かに深いはずだ。その悲しみも、当分癒えることはないと思う」