愛は手から零れ落ちる
バーに勤め始めて1ヶ月が経った。
「朋美ちゃん。勤めてもらってから1ヶ月。どう、このまま勤めてもらえる? 」
「出来ればお願いします。」
「よかった。じゃ、このままよろしくね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
櫻井君がこのやり取りを聞いていた。
マスターがいなくなると櫻井君は私に怒ったような口調で言った。
「あんたさぁ~、このままここだけに勤めるの? 」
「そのつもり。」
「ふーん。」
「何よ。意味ありげ。」
「あんた、頭いいんだろ。他にも仕事あるんじゃないの。」
「放っておいてよ。櫻井君には関係ないでしょ。」
「まぁな。」
年下のくせに生意気。でもいつも痛いところを突いてくる・・・
日中、アパートで洗濯物を干していたら玄関でベルが鳴った。
「お届け物でーす。」
と、ドアの外から聞こえた。
私は何も受け取るもは無いけど・・・と思いながら、のぞき窓から見ると配達員の制服を着ている男の子が立っていたのでドアを開けた。
「嶋村さんで間違いないですか? 」
「はい。」
「では、ここに印かサインを。」
私は配達員からペンを借りてサインをして、大きな封筒を受け取った。
「ご苦労様でした。」
勢いよくドアが閉まった。
差出人を見た。達 正之・・・正人さんの父親だった。