純・情・愛・人
5ー3
「けっきょく宗とは話せねーまンまか?」

広くんが運転する六人乗りのミニバンは有馬の家に向かっていた。チャイルドシートを備え付けてくれた二列目で、音の鳴る絵本をめくり、大地の気を逸らしているわたしに、助手席からお父さんが横顔を覗かせる。

「うん・・・。電話くれたんだけど、遅くて寝ちゃってたから」

「宗の気持ちもなぁ分かんだけどよ、カズまで焦るこたないやな」

おじさんから『大地を有馬に』と直接お父さんに打診があったことを、苦そうな面持ちで明かしてくれた。

「やりたくねーなら、ガマンしねーできっちり言ってやれや。オレの眼が黒いうちは手ェ出させねーから心配すんな」

「親父さんにそのセリフ言われちまったら、俺の立つ瀬がねぇよ」

「おー、もっと気張れや」

「うるせぇ」

広くんの小さい舌打ちは愛嬌がこもって聞こえた。

二人が話す時はいつもこんな風だ。どっちも遠慮がないし、親子というより友達に近い。宗ちゃんもお父さんに敬語は使わないけど、一目置いて馴れ合ったりはしない。

お父さんが広くん推しなのは、性格が似てて分かりやすいからかな。おじさんよりお父さんに懐いてるからかな。広くんはお父さんといる方が気が楽なのかな。

極道は。・・・好きじゃないのかな。
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