純・情・愛・人
彼を見つめる。

有馬の家で再会してからしばらく黒髪のツーブロックだったのが、最近はブラウンカラーに染めたトップにウェーブがかかっていた。

すっと整った印象の宗ちゃんと比べて目鼻立ちがはっきりして、二人は個性のちがう大人になった。優しさも強さも、ちがう二人になった。

宗ちゃんしか見えていなかったのに、いつの間にか同じくらいの大きさで広くんが隣りに立っている。力強い腕をわたしに差し出している。

ありがとう。・・・の他に言葉が探せない。言わない、まだ言えない。

最後の最後で宗ちゃんは分かってくれる・・・と、淡い期待を噛みしめる自分を消せない。

もしも。広くんの言うとおり、聞き分けのないわたしを宗ちゃんが見捨てて、大地を有馬の子にしようとしたらそのときは。

タスケテ。

揺らがない双黒のアーモンドアイを黙って見つめ、運命を委ねた。委ねることに不安がないほど彼はわたしにとって。

「・・・・・・・・・広くんは優しすぎる」

視線を洗濯物に落として呟いた。

「お前にだけだ、バーカ」

意地悪く笑った気配。

膝の上であやされる大地はご機嫌で。描いていたのはこんな、何気ない日々の団らんで。笑ってるのは宗ちゃんでいてほしかった。

宗ちゃんにあげたかったのは、跡継ぎなんかじゃなかった。

なかったの・・・・・・。



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