純・情・愛・人
気怠さと眠気に包まれべッドに沈んだ途端、宗ちゃんの腕の中に閉じ込められる。

「寝かせるとは言っていない」

少し意地悪に聞こえた。さっきお風呂に入ったばかりなのに? わざと逃げるフリ。

「今夜は好きに食べさせる約束だろう」

「・・・躰が無くなっちゃう」

「俺以外の誰かにやるつもりか?」

目の奥が笑って見えなかった。首を大きく横に振った。

「いい子だ、薫」

優しい声だった。優しく時間をかけて焦らされ、責められ。泣いて懇願しても赦してくれなかった。見えない跡を刻まれている気がした。俺のものだと上書きを繰り返し。

ぼんやり意識が醒めたとき、額に宗ちゃんの寝息を感じて幸せだった。・・・少しだけ切なかった。

証明できるものなら躰を割いて見せてあげたかった。わたしの心が0.000001㎜の隙間もなく、宗ちゃんで埋め尽くされているのを。




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