純・情・愛・人
朝ご飯のあとは、目についたところの掃除や整理を休み休みに。動いていれば気が紛れる。リビングの壁掛けテレビも、BGM代わりに付けっぱなしにしておく。

わたしが何かしようとすると、いつも広くんが手を貸してくれた。有馬の家はお手伝いさんがいて、電子レンジの使い方さえ覚える必要がないのに。まさか一緒に料理をする日が来るなんて思いもしなかった。

今日はぶっきら棒な手が出てこない。足りない。・・・そう感じるくらい、彼が日常に溶け込んでいたことを気付かされる。

お昼前、広くんから電話がかかってきた時、訳もなくほっとした自分がいた。野太い笑い声が雑じって届き、披露宴の最中だったんだろう。

『メシは?』
『具合悪かったら言え』
『大人しく昼寝でもしてろ』

素っ気なくても気遣う言葉ばかり。広くんの優しさは鬼のお面をかぶっている。

きっとその下は、昔の広くんのまま。いつか素の優しさでわたしとも向き合ってほしい。身勝手に願いたくなる。心から。




夕方に二度目の電話。最後は夜の八時半過ぎ。

『今から戻る。俺がいなくて、せいせいしたかよ』

気怠そうな憎まれ口に、小さく口許を緩めた。

「せいせいって言うよりスースー、・・・かな」
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