純・情・愛・人
彼の望みには報いてあげられないのに優しさを求めて、甘えて、ずるい。

いつからこんなにわがままで、欲張りになったんだろう。わたしの人生に広くんを巻き込むのはエゴだって分かっているのに。自嘲気味に笑んだ。(いばら)が締め付けるような、この胸の痛みは罰だ。

もうわたしのことは、放っておいてくれてよかったのに。

「わたしを嫌いになってくれればよかったのに・・・」

「・・・ならねぇよ、死んでも」

まさかとは思わず息を呑んだ刹那、醒めたアーモンドアイとぶつかって体が逃げかかる。

「嘘つき・・・っ」

「酔ってねぇって言ったろうが」

捕まった手首。恥ずかしさと居たたまれなさに顔を背けながら、本気で抵抗しなかったのは、澱みなく聞こえたから。

「薫子」

振り返らない。ソファを鈍く軋ませ、わたしを離さないままゆっくり体を起こした広くん。

「お前に惚れてる俺を利用しろ。子供の為でもかまわねぇよ、俺にすがれ。必ず助ける、裏切ったら殺せ」

深いところから真っ直ぐ伸びてくる声だった。おずおずと半身向き直り、見据えられた眼差しに吸い込まれて。動けない。

「お前はなにも分かっちゃいねぇんだよ、・・・兄貴もだ。憶えとけ、お前の為なら俺は極道も棄てる」
< 99 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop