愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
マスターの宮沢が低く渋い声で南を歓迎する。
七三に分けた真っ黒な髪とはアンバランスな顎髭をたたえた五十代前半の宮沢は、南から碧唯に視線を移した。
〝お連れがいらっしゃいましたよ〟といった目線だ。
「マスター、こんばんは」
南が声をかけると、そこでようやく碧唯が振り返った。
切れ長の目元にほんのり笑みを浮かべ、薄い唇を三日月の形にする。外交官という社会的地位の高いエリートの彼が放つ、知的な雰囲気は隠しきれない。
そこに色気まで漂わせるからテーブル席にいるふたり組の女性から好意的な目を向けられているのに、当の本人はまったく気づいていないのが少しコミカルだ。
「碧唯くん、お待たせ」
「仕事おつかれ。先に飲みはじめてる」
碧唯は中身が半分ほどになったグラスを軽く持ち上げた。
たぶんいつものモスコミュールに違いない。