愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

学校へ通うときに結成される登校班が碧唯と一緒だった。彼は口数こそ少ないが、下級生の面倒をよく見る男の子だった。

道端に咲いている花に気を取られたり、行き交う車のナンバーを読み上げたりしながらノロノロ歩く南を気長に待ち、ときには手を繋いで学校まで連れていってくれたものだ。

でもそれも南が小学四年生の一学期まで。両親が離婚して引っ越しを余儀なくされ、碧唯ともそれきりだった。さよならさえできずに。

再会は高校一年生のとき。有数の進学校になんとか滑り込んだ南は、小さい頃から憧れていた弓道部に入部した。
少女時代に夢中になって読んだ漫画の主人公が、弓道部に所属していたのが志望動機という不純極まりないものだったが、夢中になったいい思い出である。

そこに部長としていたのが三年生の碧唯だった。

およそ六年の歳月が流れていたため南はまったく気づかずにいたが、仮入部の最後の日に『もしかして、あの呑気な南ちゃん?』と唐突に声を掛けられた。
いくら部長でもいきなり面と向かって〝呑気〟なんてひどいと眉尻を上げそうになったそのとき、登校班で一緒だった碧唯と気づいた。

同じ一年生の女子たちがざわついたのは言うまでもない。
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