愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

あまり深く詮索されるのは、今の碧唯にはつらいところである。

初夜で南のセンセーショナルな涙を見て以降、碧唯は南と一定の距離を取っていた。

挨拶程度のキスはするし、ごく普通に話もする。しかし彼女を抱いてはいない。
仕事が忙しいのは事実だが、毎晩のようにロマンジュで時間を潰し、夜は極力一緒にいないようにしてきた。

彼女の涙を二度と見たくないからだ。

南が寝入ってからベッドに入るようにする以外、彼女に触れずに眠れる気がしない。

結婚前にあった友達としてのアドバンテージが、結婚後に忌々しいものに変化するとは。
いっそ友達でなければよかったのにと悔やむ、女々しい男に成り下がっている。由々しき事態だ。

南の気持ちを友情から愛情に変化させるなどという芸当が、いったい自分にできるのだろうか。
そもそも恋に進展する可能性があれば、最初からふたりの仲はそうなっていただろう。何年も友達でい続けられたのは、ふたりの間に恋愛の種がないからだ。

(最初からないものを育てられるのか?)

抱かれたくなかったと涙した南の心を、一身に自分のほうに向けるのは、日本とEUの経済協定を健全に維持するよりずっと難しく思える。


「じゃ、俺はこっちだから」
「お疲れ様!」


咲穂と別れ、その夜も碧唯はロマンジュへ足を向けた。
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