愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
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夕凪で夕食を食べ、千賀子と解散した南は駅のホームに立ち、ぼんやりと考え込んでいた。
滑り込んできた電車が巻き起こした湿った風が、髪をかき乱していく。停止した電車のドアが開き、行き先を告げるアナウンスが響く中、電車に乗り込んだが――。
(やっぱり行こう)
発車のベルが鳴ったそのとき、閉まるドアをすり抜けてホームに戻る。
「駆け込み降車は危険ですからお止めください」
明らかに南を注意するアナウンスが響いた。
誰に謝ったらいいのかわからず、周りを見渡して方々に頭を下げる。南は反対側のホームに入ってきた電車に乗り換えた。
千賀子に言われた言葉が、ずっと頭の中を渦巻いていたのだ。
『素直に告白したら?』
言われたときにはとんでもないと首を横に振ったが、そうしなければふたりの関係は停滞したまま。前にも後ろにも進めない。