愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
ガタンと椅子を鳴らし、沖山が背もたれに体を預けて戦慄く。
まるで天変地異を目の当たりにしたみたいだ。
(そこまで驚かなくてもいいのに……)
でも南自身も、〝彼氏〟なんて言葉を自分の口から発する日がくるとは思いもしなかった。
驚かれて初めてちょっとむず痒い気持ちになったが、なんとか抑え込み――。
「部長、セクハラですよ」
満面の笑みで釘を刺す。
「いや、だって仕事が恋人じゃなかったのか?」
「失礼ではないでしょうか」
笑顔を一変させ、湿気を含んだ視線を向けた。
南もそう思ってはいたが、人から指摘されるとそれなりに傷つくというものだ。
「悪い。あまりにもびっくりしてな」
「近々結婚もします」
「はぁ!?」
取り繕ってネクタイを整えるような仕草をした沖山が、今度は声をひっくり返らせた。