愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
(い、いけないいけない。私は碧唯くんの婚約者なんだから、それらしい雰囲気を醸し出さなきゃ。……でも今、耳に軽くキスしなかった?)
故意か過失か。どぎまぎする南を楽しんでいるかのような目をする碧唯を軽く睨んだ。
彼にエスコートされて邸宅の右側を迂回していくと、その先に広大な中庭が現れた。真っ青な芝生が目に眩しい。
端のほうには料理が並んだ長テーブルがあり、ドリンクをトレーにのせたウエイターが行き交っている。
すでに多くの人たちが集まっており、そのほとんどが当然ながら外国人。緊張感が南を包み込む。
(がんばらなくちゃ)
密かに自分を激励していると、遠くから碧唯の名前を呼ぶ声がした。
『アオイ!』
ふたり同時に声のほうに振り返ると、黒いスーツを着た男性が悠然とした足取りで向かってくるのが見えた。
強い癖のあるダークブラウンの髪に、いわゆるラテン系の彫りが深く凛々しい顔立ちをしている。
『アンジェロ、久しぶりだな』