愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
南の腰に添えていた手を軽く上げ、碧唯がその男性と軽く抱擁する。親密な雰囲気がふたりから漂ってきた。
二言三言、挨拶らしき言葉を交わしてからトントンとお互い背中を叩き合い離れる。そばに立つ南に気づき、男性の目線が注がれた。
『アオイ、こちらの女性は?』
『俺のフィアンセ』
イタリア語のためたしかではないが、たぶん婚約者と紹介しているのだろう。
勝手に想像して訳もなくドキドキする。
その単語は女性の心をくすぐるみたいだ。恋人よりももっと親密な匂いがする。――碧唯とは形式上の関係に過ぎないけれど。
『フィアンセ!? アオイ、結婚するのか!? 女性たちが落胆して大騒ぎになるのが目に浮かぶよ』
太陽のように明るく陽気な人だ。
『アンジェロは相変わらず大袈裟だな』
〝アオイ〟の部分しか聞き取れないため、ふたりの会話は南には一向にわからない。大学では第二外国語にスペイン語を選択したが、イタリア語にすればよかったとどうにもならない過去を悔やむ。