愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

「南、そろそろ出よう」
「うん」

彼の言葉に席を立つと、咲穂も立ち上がった。


「私も戻らないと」


思いのほか長居となったトラットリアを三人揃って出る。


「瀬那くん、ごちそうさまでした」


碧唯は席を立ったときに会計も済ませたらしく、咲穂の分も支払ってあげたようだ。


「いや」


碧唯が軽く手を挙げて応えると、咲穂は「ありがとう」とごく自然に彼に抱き着いた。
ここでも碧唯はやんわりと彼女を引き離したが、咲穂はまったくへこたれない様子でにこやかに微笑んだ。

今のはヨーロッパでは普通の挨拶。べつに深い意味はない。
自分にそう言い聞かせるが、日本人同士のためどうしても異質なものに見えてしまう。

(……って私、どうしてモヤモヤしてるんだろう)
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