なぜか推しが追ってくる。
「瑞紀ちゃんは俺のこと、恋人ができたぐらいで仕事に支障をきたすような男だと思ってる?」
「そんな訳はございません! わたしの推しは100人彼女がいたとしてもどんどん女性ファン増やすし、人気急上昇しますとも。それだけの実力を持ち合わせてるんだから舐めないでよ」
そこは即答。そして早口。
さっきの小声は何だったんだ自分。
「ふふ、ありがとう。でも、俺が付き合いたいと思ってるのは瑞紀ちゃんただ一人なんだよね」
恭くんはそんなわたしの勢いに圧されることもなくて。
その包み込まれる甘い言葉に、顔がどんどん熱くなっていくのがわかった。
「あの、その……。よろしく……お願いします……」
どうにかして絞り出した声は、またしても消え入りそうなほど小さくなっていた。
それでも恭くんは、嬉しそうにじわりじわりと目を見開いて。
わたしをギュっと抱き寄せた。
「ああだめだ、信じられないぐらい幸せ。ねえ、キスしていい?」
「ひあ!? で、でもこの台本だとラストのキスはふりだけでは……」
「そこは……アドリブで」