なぜか推しが追ってくる。



彼は、一歩一歩そおっと後ずさりはじめた。

こんな尊さ極まってる写真見せてあげてるのになぜ離れる……と、わたしはスマホを突きつけたまま離れられた分また近づく。


と……。




「え、えっと何かすみません、さっきのは忘れてください!」




彼はそう言うと、くるっと回れ右して、全速力で走り去っていった。


その後ろ姿を見送って我に返る。


……やってしまった。

「わたしはそんなに綺麗でも可愛くもないよ~」とアピールするための比較対象として恭くんの写真を出したのに、いつの間にか熱が入りまくっていた。


まあいいや。どうせ断るつもりでいたから結果オーライってことで。


そう思って、まだ恭くんの画像が表示されたままの画面に目を向ける。




「……いやまじで可愛いな」




女装させられてポーズを決めているけど、若干恥じらいが捨てきれていないところとか本当に本当に可愛い。

だけど次の画像にスクロールすると、今度は不良系キャラを演じたときの目つきが鋭い恭くんが現れる。あああ温度差よ。



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