冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 しかし、呪いが横行していた頃には頻繁に使われた。そのため光属性を持つ者が激減したんだ。そして呪殺を試みる者も摘発され次々に処刑された。もちろんこの事実は公にはされていない。歴史的にも隠されている。この国の機密事項だから、君も絶対に口外することのないように」

 陰惨な歴史だ。

「それでね。我々というより、君の義弟のリーンハルトが仮説をたてた。君がなぜ呪いから逃れられたのか」
「仮説ですか?」

 今回死なずにすんだが、レティシアにとっては何が何だか分からない。指輪は毎回同じだし、アミュレットに関しては前回より、少し性能が上がったくらいだ。

「自己犠牲だよ。前回リーンハルトは君の為に犠牲になった。しかし君はそんなリーンハルトを生かそうとして自らを犠牲にした。呪いに打ち勝つ方法は誰かを救おうという無私の犠牲と光の魔力。今回、君は呪いがかかる前に、既に呪いをはねつける力を得ていたんだよ」
「えっと……」

 レティシアの頭はこんがらがった。

「簡単に言えば、君は君自身を生贄にして助かったんだ。リーンハルトを生かす道を選び、自身を救ったんだ」

 それはレティシアの時が戻っても有効だったいうことなのだろうか? 嫌な考えだが、生贄の数は合っている。

「そんな……。では時が戻ったのは」
「それは、君の持っていた指輪がそういうアーティファクトだったのだと思う。それと君の実父母の思いが込められていたのかもしれない。
 君がループしていたのか、それともアーティファクトの見せた夢なのか、我々にも真相は分からないのだ。
 しかし、これは君が本当にループしていたという前提にたっての検証だし、私もそう信じている。
 ただ一つ言えるのは君の周りには君を守ろうとする者がいて、君もそれらを命懸けで守った。レティシア、君は強力な光属性の魔力を持っている。だから、起こせた奇跡だとそう結論付けるしかない」


 前回で死のループは終わっていた。それなのにレティシアは無駄な動きをしてリーンハルトを傷つけたことになる。全身から力が抜けて行くような気がした。



 ◇

 リーンハルトが迎えに来た。久しぶりに家に帰れるのは嬉しい。義弟と一緒に馬車に乗った。
 彼の表情に疲れが見える。少しは眠れているのだろうか?

「リーンハルト、ごめんね」
「どうして、レティシアが謝るの?」
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