有り ふれた 人生

藤 吾  ①


「あっ、すみません。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
と、歯科衛生士の
清家 静香さんの落とした
患者さん用のスタイを拾い
渡そうとした時に
彼女の制服から見えた。

「清家さん?」
と、言うと困った顔をして
「みなかった事にして下さい。」
と、涙目で言う彼女に
「わかりました。
ですが何かありましたら
直ぐに私か佑未に言って下さい。」
と、伝えた。

何かあれば言ってくるだろうと
俺は深く考えてなかった。

働いて貰っている方ではあるが
既婚者であるし
問題ないと。

しばらくすると
「藤吾先生。
少しお時間宜しいですか?!」
と、清家さんから
「大丈夫ですよ。」
と、言って仕事が終わって
話をした。

今日 佑未はお義父さん達と
会議の日で不在だった。

清家さんは
あれから友人の説得もあり
病院に行き警察に届けた。

彼女のDV被害は、
見えない体の部分だけだった。

今は、友人の家に寝泊りしている。
が、そこにいることが
旦那に知られた?
「怖いから今日送って頂けませんか?」
と、言われて
彼女を送った。

そんな日が一週間の内に
何度かあり
佑未からも訊ねられたが
清家さんが、怖がるから
話せずに
「大学時代の友人達に
    頼まれ事をされたから。」
と、話した。

この時 相談していたら·····
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