甘く、溶けるように。
今更そのことに気がついて聞くと、芹沢くんは首を横に振った。
「それはへーき。店長と他のバイトがやってくれてあるよ」
「それなら良かった…」
私のせいで芹沢くんが怒られるようなことがあったら…と思うだけで血の気が引ける。
店長さんやバイトの方は奥で片付けをしていて、カフェのホールには私と芹沢くんしかいない。
芹沢くんは、ココアを飲む私のそばにいるだけ。
何があったの?とか、詮索するようなことは一切ないから、芹沢くんに気を使わせてしまっているかも…。
「…何も、聞かないんだね」
だから、わざわざ私の方からそんなことを言ってしまうくらいには、この空気が堪えがたいものになっていた。
「…まぁ、クリスマスに女の子ひとりで凍えてるってことは、何かしらがあったわけでしょ。服だって、明らかにデート服だし」
「う…それは…そう、だね」
聞かなくてもわかるとでも言わんばかりの顔で告げられた事実。
自分の身に起こったとは思いたくないけど、やっぱりこれは現実なわけで。
ちらっとスマホを確認しても、諏訪先輩からのメッセージはない。
たぶん、既読もついてないだろう。