俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
「死ぬような傷なら、今喋れてないし、もっと大げさな機械がこのあたりにあるはずだろう。他の誰かと勘違いしたんじゃないのか?」

 確かに冷静になって周りを見れば、点滴はあるものの物々しい感じはしない。

「大騒ぎして、ごめんなさい」

 自分の勘違いが急に恥ずかしくなった。

「でも……よかった。生きていて」

 それが本音だった。ほっとしてまた泣いてしまう。

「泣くなよ、……痛っ」

 体を動かした彼が、痛みに耐えるように顔をゆがめる。

「だ、大丈夫ですか! 看護師さんを――」

「いや、いい」

「でも!」

「いいから。今俺に必要なのは、医者でも看護師でもなく。お前だよ、未央奈」

 いつもよりも力ない彼の手が、私の手をゆっくりと引き寄せた。ぎゅっと握られた手に力がこもりぬくもりを感じる。

「あぁ、よかった」

 真っ赤に染まった手を見たとき、彼の死が頭をよぎった。彼が無事だと知って、安堵で体の力が抜け、やっぱり涙が止まらない。

「ふっ、勝手に人を殺すなよ」

 彼が柔らかく笑って、繋いでいた手を離し私の涙を拭う。

「泣くなよ。最近お前の笑っている顔見てない。なぁ、笑ってくれ」

 急に涙は止まらないので、私はそのまま無理矢理笑った。

「ふふ、すごい顔だな」

「ひ、ひどい」

 笑えって言われたからがんばったのに。でも彼が笑ってくれたのならそれでよかった。

「未央奈は、ケガないのか?」

「はい。大輝さんがかばってくれたので」

「ならよかった。俺の方も見た目ほど重症じゃない。まぁ、俺もあれがなければやばかったけどな」

 彼がベッドサイドのテーブルに置いてある箱に手を伸ばす。

「これが、俺を守ってくれた」

 深い紺色のベルベットの箱にはナイフでついたのか、傷がついている。

「これは?」

 新しくヘイムダルホテルで取り扱うようになった、ジュエリーのサンプルだろうか。

「中、開けてみて」

 言われるままに開いてみる。そこには立爪の大きなダイヤの指輪がある。このような仕事をしていてもあまり見ない大きさのダイヤに、目を奪われる。

「綺麗」

「刻印、見て」

 言われてリングの内側を見てみる。そこには【TAIKI TO MIONA】と刻印されていた。

「え、なに、なんで?」

「なんでって、お前にプロポーズするためだよ」

 彼の言っていることの意味がわからない。頭の中が混乱してうまく考えがまとまらない。
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