俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 私が体を近づけると、手を伸ばし抱きしめようとしたが。

「――つぅう、……痛い」

「当たり前です。ケガしてるんですから」

「久しぶりにこんなに近くにいるのに、抱きしめることすらできないなんて」

 心底残念そうに言う彼に、私は思わず笑ってしまった。

「私も残念です。だから早く元気になって」

 私は彼の唇に自らキスをした。

「わかった。治ったら覚悟しておけ」

「……はい、待ってます」

 甘い会話の最後に、キスを交わす。彼は私の手を握ったまま眠りについた。



 三日後、大輝さんの退院を翌日に控えた日。

 私は午後からの出勤の前に、野迫川社長と一緒に大輝さんのお見舞いに病室を訪れていた。

 大きな果物のかごと、仕事の資料が野迫川社長の見舞いの品としてテーブルの上に置かれている。

「いやぁ、まさか刺されるとは……学生のころ女子たちがお前をめぐって修羅場になったときよりもすごいな」

「何ですか、その話。詳しく知りたいです」

 初めて聞く大輝さんのエピソードに思わず食いついてしまう。

「それがさぁーー」

「野迫川、余計なこと言うなら追い出すぞ」

 大輝さんの言葉に「怖いっ」と野迫川社長が私の後ろに隠れた。

「えー聞きたかったのに」

「今度、ナイショで教えてあげるね。また焼肉行く?」

「はい、いいんですか?」

 大輝さんの話が聞けるなら、喜んで行く。しかし彼は不満顔だ。

「おい、堂々と浮気かよ」

「浮気だなんて心が狭いな。こんな男やめて、俺にしない?」

「お前、まだ未央奈のこと諦めていないのか? 出禁にするぞ」

 ふたりがいつものように言い合っている姿を見てほっとする。刺された脇腹は幸い傷が浅く、大事にはいたらなかった。

「大怖い。いや真面目な話、犯人は今回二回目だし傷害事件だから。おそらく実刑になるだろうって。後は御杖家の弁護士がうまくやるだろうけど」

「そうですか。すみません、大輝さんを巻き込んでしまって」

 私をかばってこんなことになってしまい、申し訳ない。

「気にするな。お前がケガしたほうが、俺にとっては問題だ」

 思わず彼を見つめると、彼も見つめ貸してくれる。そんなに大切にされると、うれしいけれど恥ずかしくなってしまう。

「あ~あ、ふられた俺の前でいちゃつかないで」

「嫌なら帰ればいいだろ」

 大輝さんの言葉に野迫川社長はむっとした。
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