俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 突然頭の後ろに手を回されて、ぐいっと引き寄せられた。

 そして躊躇なく唇を奪われる。舌でくすぐられ割入れられ、口内を余すところなく味わう彼。ドキドキしすぎて胸が苦しくなる。

 だけど……このまま続けていたら午後からの仕事に集中できなくなってしまう。

「……はぁ、もう。終わりっ」

 やっと彼の腕をほどき、座っていたベッドから立ち上がる。

「なんだよ、もうギブアップか?」

「これ以上は退院したときの楽しみがなくなるでしょう?」

 強がって見せる私に、彼が笑いをこらえている。

「そうだな。たしかに」

「だから、早く元気になって。力いっぱい抱きしめて」

「わかった」

 彼の頬にひとつキスを落として、私は今度こそ病室を後にした。



 そして私がヘイムダルホテルで勤務する最後の日。

 豊川さんと小田さんの挙式が行われた。

 前日まで入念に打ち合わせをし、始まるぎりぎりまでチェックをした。

 途中トラブルもあったが、天川課長や香芝さんがうまくフォローをしてくれてふたりの最高の笑顔を見ることができた。

 最後にふたりから花束をもらったときは、思わず滝のような涙をながしてしまい、多くの人に笑われた。

 お客様を見送り、片付けをすませる。みんなが順番に退社していくなか、私は最後まで残り思いつく限りの仕事をした。

 最後にあちこち歩いて回る。受付からサロン、事務所に廊下。エレベーターまでも想いで上がる。たった一年と少ししかいなかったのに、ちゃんと自分の居場所になっていたのだとあらためて思う。

 チャペルにたどり着いて真ん中に立ち周囲を見渡す。ステンドグラスの美しいチャペル目当てに、ここで挙式を希望するカップルも多い。

 自分の担当したカップルや、天川課長、香芝さんや、他のスタッフ。それに大輝さんの顔が次々に思い浮かんだ。

 最初は不本意だった。彼氏に振られたばかりで結婚とは縁遠い私に何の試練だとさえ思った。

 でもあのときここに来る決心をしてよかった。たくさんの失敗や成功を経験して、人の人生の節目に携われる仕事のすばらしさを知れた。

 これも大輝さんの後押しがあったからだ……。

 いや、あれは背中を押してくれたというより、煽られた感じだけど。

「なに、感傷的になってるんだ」

 コツンと足音を響かせてやってきたのは、今頭に思い浮かべていた大輝さんだった。

「いいんですか、寝てないで」
< 105 / 112 >

この作品をシェア

pagetop