俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 そんなことを繰り返しているうちに、彼にバスルームから連れ出され、気が付けば寝室のベッドの上だった。

「ねぇ、明日早いのわかってる?」

「あぁ。もちろん。でもそれとこれとは話は別」

 妖艶な笑みを浮かべる彼。普段ならかっこよくて流されてしまう。けれど今日はそうはいかない。

「お願い」

 私は彼を見つめてその頬に手を伸ばす。真摯に頼めば通じるはずだ。

 しかし――。

「はぁ。可愛い。悪いけどさっきの逆効果だわ」

「え……ちょっと、待って……んっ」

 さっきの自分の行動の何が悪かったのだろうか。

 反省する間もなく、結局彼に身を任せることになってしまった。

 どうしてこんなことに? と、思う反面。結局のところ彼が好きな私は抵抗できずに、体と心の隅々まで愛された。



 私がヘイムダルホテルに再就職してから一年が経過していた。

 ブライダル事業を見事立て直した大輝さんはホテル事業に力を注いでいる。経営企画室専任になり、役職も部長から専務となり日々忙しそうだ。

 私は相変わらず……失敗もしながら、日々顧客の笑顔のために走り回っている。

 そんな私だったが、今日はいつもと立場が違う。

 自分が主役の一日――大輝さんと私の挙式の日だからだ。

 今日だけは楚々とした花嫁になるはずだったのに、やっぱりじっとしていられずにオートクチュールのウエディングドレスのまま、あちこち動き回っていた。

「香芝さん、食事のアレルギーのことだけどもう一度チェックしてもらっていい? それからアルコールは招待客に取引先の方がいらっしゃるから、メーカーも確認――あぁ、ごめんね。忙しいよね。私が行く」

「ストーップ」

 動きだそうとした私を止めたのは、桎梏のタキシードに身を包む大輝さんだ。突然現れた彼に周囲の皆がため息を漏らすほど、いつもの何倍もかっこいい。

 いけない、私まで見とれている場合じゃなかった。

「でも――」

「はい。可愛い花嫁さんは〝でも〟は言わない。こういうときは自分の仲間を信頼するものだ。違うか?」

 彼の言葉にはっと気づかされる。周囲を見ると、にこにこと笑って私たちを見ていた。

「今日はプランナーの飛鳥さんではなく、御杖夫人だろ」

「はい。そうでした」

 肩をすくめた私を見て、天川課長改め、天川部長も笑っている。

「よければ何かお飲み物をお持ちしますが、いかがですか?」
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