俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
 疲れていて作り笑いすらできない。自分がどうすればよかったのかと思い悩む。

 ふと外を見ると、間もなく自宅マンションだった。近くのコンビニで降ろしてもらう。

「うち、すぐそこなんで。ここでいいです」

 目と鼻の先のマンションを指さす。そこまでの道のりもこの時間ならまだ人通りもあるし街灯も明るい。

「ダメだ。マンションまで送っていく」

「いや、本当に大丈夫ですから。これ以上ご迷惑をおかけできませんから」

 私はなかば強引に車を降りると、自宅に向かう。

 あんなことがあったので気になって背後を気にしながら歩いたけれど、特に何もなくほっとしてマンションのエレベーターを待ち扉が開いたので中に乗り込もうとした。

 そこで私の心臓が止まりかける。

「ひっ」

 そこには林さんが立っていたのだ。悲鳴を上げようにも怖くて声が出ない。

「遅かったね」

 そう言ってにっこり笑った彼の顔を見た瞬間、私は踵を返して震える足をなんとか動かしてマンション逃げ出した。

 どうして家の場所まで……。心臓が恐怖でドキドキと震えている。背後を見ると林さんがマンションから出てきてこちらに向かってきている。

 泣くのを我慢して走るが、ヒールが脱げそうになりその場で躓いた。ヒールは脱げたままだがそのまま走ると目の前に殺気まで乗っていた車が止まっている。

「飛鳥、どうかしたのか?」

 車の扉が開き、御杖部長が降りてきた。その顔を見た瞬間、我慢していた涙が頬を伝う。

「後ろ、林さんが……」

 それ以上言わなくても彼は理解してくれた。

「車に乗って待っていろ」

 彼はそう言うやいなや、私のマンションの方へ駆け出した。

 言われた通り急いで車に乗り待つこと数分後。

 人影が近づいてきたことに驚いた私は、それが御杖部長だとわかりほっとして体の緊張を解いた。

「……悪い、取り逃がした」

 運転席に座った彼は、息を切らしながら顔をしかめている。全力で林さんをおいかけてくれたのがわかる。

「あの、ありがとうございます。すみません、変なことに巻き込んでしまって」

 本来ならば自分で解決しなくてはいけない話だ。それなのに私は怖くてここで待っていることしかできなかった。

「巻き込む? 他人行儀なこと言うな。お前は俺の婚約者だろ?」

「それは建前で――」
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