俺様御曹司のなすがまま、激愛に抱かれる~偽りの婚約者だったのに、甘く娶られました~
「建前でもなんでも、お前はいつもひとりでなんでもやろうとしすぎだ」

 彼の言う通りだ。これまで自分の面倒は自分でみてきた。それがあたりまえだったからだ。

 けれどここういうときに、隣に人がいてくれることでこれほどまでに心強いのかと思う。

 それは彼だからかもしれないが。

「はい、助けてくれてありがとうございます」

 本当は怖くて仕方がない。だから素直に彼に甘えた。

 すると彼の大きな手が伸びてきて、私の頭を優しく撫でた。

 そうされることで緊張の糸がプツっと切れて、私の目から涙がぽろぽろ零れ落ちた。

「す、すみません、なんだか急に涙が」

 慌てて目をこすったけれど、流れ出した涙は止まらない。

「怖かったな」

 そう言った彼の手が伸びてきて、私を抱きしめた。彼の胸に顔をうずめて泣き続ける。

 彼はそんな私を守るように抱きしめ続けてくれた。

 それからすぐに警察に状況の説明をしたけれど、実際に被害が出たわけではないので被害届を出すこともできない。

 パトロールは強化すると言っていたが今できるのはそこまでだと言われてしまった。

 御杖部長は意気消沈の私を車で自宅までのせてくれる。

 しかし到着後、彼は驚くべきことを口にした。

「荷物をまとめて、俺の部屋に行くぞ」

「え、どうして?」

 なぜそんな話になるのだろうか。

「いいか、林はお前の部屋を知っている。だからこの後ここにまたやって来る可能性がないわけじゃない」

「あっ……」

 たしかに林さんが偶然ここに来たとは考えづらい。そう思うと背筋が凍るほどぞっとする。

「それならホテルにでも泊まります」

「ダメだ。それでも安心できない。それにいつ解決するかわからない、ずっとホテル暮らしできるのか?」

「それは……無理ですね」

 生活に困らない十分なお給料はもらっているが、ホテルに長期ステイするとなると話は別だ。現実的に考えて難しい。

「それならうちに来ればいい。婚約者なんだから。これが囲い込んでいたら向こうが手出しできないし、うまくいけば諦めるだろう」

「それはそうかもしれませんが」

 婚約者、婚約者って御杖部長がその場しのぎで言ったことなのに。

 歯切れの悪い私に彼が何か思いついたようにニヤッと笑った。

「うちに来るのが嫌だって言うなら、俺がお前の部屋に住むか。それもいいな」

「なんでそんなことに!? 絶対無理です」
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