【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 部屋に入っても、クラークの動きはぎこちない。
「旦那様、先にお風呂に入りますか?」
 遠征から戻ってきたことを考えれば、ゆっくりと湯に浸かりたいだろう。
「そうだな、着替えの前に風呂に入ろう」
「では、すぐに準備をいたしますね」
「君がか?」
「浴室はすぐそこですから」
 夫婦の部屋とは便利なもので、浴室へと扉で続いている。もちろん化粧室と御厠も設けられている。
 浴室の清掃は、侍女が気合いを入れて念入りに行ってくれた。だから、あとは湯を張るだけだ。
「旦那様、着替えは籠の中に準備しておきましたので」
「ありがとう」
 そう礼を口にするクラークは、やはりどことなく不自然だった。
「旦那様、どうかされましたか?」
 あまりにもの不自然さに、オリビアもついそのように声をかけてしまった。
「いや、どうもしない」
 クラークはパタリと続きの扉をしめた。
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