【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 アトロは王国騎士団長を務めていた。だが二年前の王都ギザラを襲った大火事が原因で、その命を失った。
 大火事は、王都の東側の居住区を燃やし尽くし、完全鎮火まで丸二日かかった。
 彼は逃げ遅れた母子を助けようとしたようだ。赤ん坊を抱えている母親を助けたところで、彼自身が炎に飲まれた。
 すぐさま他の騎士が救出してくれたが、数日の間生死の境目をさ迷い、息を引き取った。それまでオリビアは、病院のベッドの上で苦しんでいる父親に寄り添っていた。
 息を引き取った時も、最期が父親らしいとオリビアは思い、誇らしさと悲しみに浸った。
 そして気づいたら、クラークと結婚をしていた。
 おかしい、何かがおかしい。
 心当たりは全くない。
 だが、結婚誓約書の写しをクラークに見せつけられ確認すると、そこにはまさしくオリビアの自筆のサインがあった。さらに、未成年であったため、その隣には父親であるアトロのサインまでもがあった。
 おかしい、何かがおかしい。
 オリビアは考える。
 どうして、こうなった?
(あ、あのとき……)
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