【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 次第にオリビアの頬が熱を持ち始める。
「だから……に。俺に思い出をくれないか? 先ほども言ったが、君と一緒に、出掛けたいんだ」
 いけない妄想をしていたオリビアは、クラークの言葉の最初の方を聞き逃していた。だけど、彼がオリビアと共に出かけたいと口にしてくれたことが嬉しくて「はい」と返事をする。
「そうか、よかった。ありがとう。どこか行ってみたい場所はあるか?」
 クラークの声が弾んだようにも聞こえた。だからオリビアも釣られて笑顔になる。
 そうですね、と彼女は考える。
 クラークが不在の間、オリビアが定期的に足を運ぶのは、どこかの屋敷で開かれるお茶会程度。そこで仕入れた情報によると、今、流行っている映画があるらしい。
 恋愛映画だが、男女の織りなす三角関係が涙無しでは見られないと、侯爵夫人のポリーが言っていた。そして、その三角関係から派生するイチャラブシーンも、ただのイチャラブではなく、濃厚でしっとりと、見る者の心をえぐるような演出がされていると、ポリーが熱く語っていたのだ。
 そこまで語られたら、オリビアだって気になってしまう。
 一人で映画館に足を運ぶ者もいるとはいうが、まだ大人の階段を一段しかあがっていないオリビアにとって、一人でというのは、階段の三段上のような存在である。
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