【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 そうしないと、クラークの下腹部がもたない。すでに、ドクドクと熱を溜め始めているのだ。
(こ、これは……。眠れないかもしれない……。一度、抜いた方がいいな)
 これから彼女と離縁の手続きをするのだ。それがわかっていながら、己の欲のために彼女を抱くことなど、許されるわけはない。
 それに、遠征先などで昂ることも多々あるし、それは彼だけではなく、他の仲間も同じであった。
 プロに頼る者もいたし、自身でという者もいた。
 形だけの結婚であることはわかっているが、オリビアという妻がいる身で、団長という肩書がある以上、下手にプロに頼ることはしなかった。
 クラークを陥れて、オリビアを奪いたいと願う男は、多々いるのだ。だからこそ、遠征先でもクラークは気が抜けなかった。
 王都に置いてきたオリビアのことは心配であったが、幸いなことにディブリ家の使用人たちは優秀であるため『奥様のことは、私たちがお守りいたします』と口を揃えて言ってくれた。だから、彼女のことは彼らに任せることにした。
 その結果、彼女はクラークが不在の間、家のことも家令の手を借りながら、こなしてくれていたのだ。
(本当に、俺にはもったいないくらいの女性だ……)
 彼女を起こさないように、ゆっくりと身体をずらし、ベッドから降りようとする。
「旦那様?」
 小鳥の囀るような声で呼ばれてしまった。
(起こしてしまったのか。俺、一生の不覚)
「トイレに行くだけだ……」
 クラークのその言葉に偽りはない。
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