【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 手強い敵を想像しているのか、ポリーもむむっと唇を噛みしめていた。だが、すぐに表情を和らげる。
「ですが、ジャンから聞きましたわ」
 ポリーは夫と名前で呼び合っているらしい。これもカトリーナから、夫婦仲が盛り上がる秘訣として教えてもらったものだ。
 だが、オリビアは心の中でクラークの名を呼ぶものの、本人を目の前にしては呼ぶことなどできない。
「お二人で映画を見に行かれるんですって?」
 そこでポリーは、お菓子に手を伸ばす。
「ポリー様もご存知なのですか?」
 お菓子をもぐもぐと食べていた彼女は、うんうんと頷く仕草をしていた。
「えぇ。どうやら、クラーク様が、ジャンに相談したらしいですわ。『流行りの映画を教えて欲しい』って。それをね、二日前にジャンから聞いたものですから、私とジャンのオススメの映画を紹介しておきましたわ」
 そこでポリーは紅茶を飲んだ。
 まさか、クラークがそこまでして約束を守ろうとしているとは思ってもいなかった。
「ところで、ポリー様がすすめてくださる映画とは何ですか? 教えてもらってもよろしいですか?」
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