【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい!
 シンと静まった会場内に響くのは、大きなスクリーンから聞こえてくる役者の声。それから音楽と演出の音。それのどれもが映像と合っていて、つい世界観に引き込まれてしまう。
(ポリー様がすすめてくださった理由が、よくわかるわ……)
 前半が終わると、少しの間休憩時間が入る。三時間弱に及ぶ大作のため、前半と後半に分かれているのだ。
 その間に入る小休憩。
 だが、オリビアはぼうっと座っていることしかできなかった。
「目が赤いが……」
 クラークからそう指摘され、慌てて目元を手で隠そうとするオリビアは、それの原因に心当たりがあった。
 あのシーンだ。ヒーローが好きなヒロインをあきらめて、別れを告げようとするシーン。好きであるからこそ、別れを選択する。その思いに心が打たれた。
「あ、はい……。ちょっと、感動してしまって」
 クラークがそっとハンカチを差し出したので、オリビアも黙ってそれを受け取り、目尻に溜まった涙を拭いた。
「前半もいいところで終わってしまったから、後半も楽しみだな」
 明るいクラークの声に、オリビアは頷く。
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