【受賞】幼妻は生真面目夫から愛されたい！
「ありがとうございます」
　ただ、クラークのこういった気遣いが嬉しかった。妻になりきれていない妻ではあるが、他の人から見たら仲の良い夫婦に見えているだろう。
　そうやってパンフレットを二人で見たり、他愛のない話をしたりしているうちに、大きなブザーが会場内に鳴り響いた。周囲の明かりが徐々に暗くなり、近くにいるはずのクラークの顔さえ見えない程だ。
　ボォンという大きな音で身体を震わせると、カーテンで覆われていた大きなスクリーンが姿を現す。そこに映し出される人の姿。
（うわぁ。こんなに大きいの？）
　初めて目にした映像に、感動を隠し切れない。暗い場所というところもあり、つい身を乗り出してしまう。
「危ないよ」
　耳元でクラークの低い声が響いた。腰に手を回され、きちんと座るようにと誘導される。
「あ、ごめんなさい。つい」
　子供のようにはしゃぎすぎてしまった。きっと、こういうところが駄目なのだろう。
　なんとか平静を保とうとするオリビアは、ソファに座り直した。
　映画が始まった。
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