断る――――前にもそう言ったはずだ
「僕が朝早く起きているのは――――僕はただ、モニカの寝顔をゆっくりと堪能したかったんだ。あまりにも可愛くて……愛しくて」

「……え? 寝顔、ですか? わたくしの?」


 あまりにも思いがけない真実に、モニカは大きく目を見開く。

 モニカを責め立てる理由が欲しかったとか、単に負けず嫌いだとか、三年間ありとあらゆる理由を考えていたというのに、真相はあまりにも単純だった。モニカはとても驚いてしまう。


「だから、どうしても君より早く起きる必要があった。本当にただ、それだけなんだ」

「……そう、でしたの」


 恥ずかしいのだろうか? エルネストの頬が真っ赤に染まっていく。
 彼はそれを誤魔化すように、ふいと顔を背けた。


「では、いつもわたくしの起床を待ってから準備をはじめられるのは?」

「もちろん、モニカと少しでも一緒にいたいからだ」

「……けれど、エルネスト様はわたくしが準備をはじめると、急いで朝食の席に向かってしまわれますし」

「それは……モニカには僕のことを気にせず、ゆっくり身支度をしてほしいと思っているだけだ」


 『愛している』と言われても中々実感できなかったことが、彼の行動を紐解いていくうちに、少しずつ腑に落ちてくる。
 モニカはもう、涙を堪えることができなかった。


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