※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

 ルームシェアをすることに合意した二人は連絡先を交換し、共同生活に必要ないくつかの情報を共有した。
 いつ引っ越してくるのか、お金の管理はどうするのか、食費の相場など、必要なルールを確認しあった。
 出掛けていたほのかが戻ってきたのは、話し合いが終わってから十分ほど経ってからのことだった。

「ただいま〜。話は終わった?」
「それが……」

 ソファで静かに目を瞑る静流の姿を、ほのかは珍しい物でも見るように凝視した。
 ほのかが戻ってくるのを待つ間、紗良が中座しお手洗いを済ましてリビングに戻ってくるとソファで寝落ちしていたのだ。
 眠り始めてからそう時間は経っていないはずだが、声を掛けても身体を揺すっても未だに目覚める気配はない。

「ねえ、結局どうなったの?」
「ルームシェアすることになった」

 紗良は真顔で答えた。

「マジか〜!!男の人と同居なんて大丈夫なの?パクッと食べられちゃわない?」
「何言ってんのよ。……自分で連れてきたくせに」
 
 ガオーっと狼の芝居をするほのかにすかさず突っ込みを入れる。

「それに、高遠さんは見境なく女性を襲う人ではないでしょう?」
「ま、そうだね。高遠さんが自分から女性に襲いかかるなんて想像つかないもん」

 ほのかはゲラゲラと笑いながら頷いた。

「ん……」

 寝返りを打つ静流の鼻から眼鏡がずり落ちそうになっていることに気がついた紗良は、壊れてしまってはマズイだろうと気を利かせ眼鏡を耳から外した。

(よく寝てる……。よっぽど寝不足だったの?)

 男性の無防備な寝姿を見たのはいつぶりだろう。
 間近で見る静流の綺麗な寝顔になぜかトクンと胸が高鳴った。

 こうして紗良は念願の同居人を獲得したのだった。
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