※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
九月中旬になり暑さの峠を越えると、静流が紗良の部屋に引っ越してきた。
静流が使うのは元々ほのかが使っていたリビングの隣にある七畳の洋室だ。
ベッドや本棚はほのかが置いていったものがあるのでそのまま使ってもらう予定だ。
静流の引っ越しは簡素なものだった。
家電一式を持ってくる必要がないので、レンタカーで段ボールを十箱程度運んだら終わってしまった。不要な家財はほとんど処分してしまったらしい。
「荷物の整理は終わりました?」
「はい」
荷解きを終えると元ほのかの部屋はすっかり様変わりしていた。
ボタニカル柄の可愛いらしいカーテンが外され、代わりにネイビーの遮光カーテンが取り付けられている。ベッドには同系色のシーツと枕カバーが掛かっていた。
ほのかが使っていた時はどうにも物が多くてごちゃごちゃしていたが、部屋の主人が静流に変わると物が減りスッキリとした印象になった。
「足りない物はありました?」
「ベッドは買い替えたいですかね。足が出てしまうので」
「あー……。体格が全然違いますもんね」
ほのかは紗良と大体同じくらいの身長だ。シングルベッドでも快適に過ごせる。静流のような大柄の男性では窮屈だろう。