※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
はるばる北海道まで来てよかったと思う。
これで静流もルームシェアの解消を考え直してくれるだろうと、紗良は淡い期待を抱いていた。
お金の話だけではない。紗良にとって静流と過ごす時間がいつからかかけがえのないものになっていた。
小高い丘の上からラベンダー畑を見下ろしながら、紗良は上機嫌でステップを踏んだ。
だからこそ、静流の言葉が俄に信じがたかった。
「紗良さん、やはり私はあの部屋を出ようと思います」
「……え?」
「どちらかに好きな人ができたらルームシェア解消だと言ったのは紗良さんですよ」
突然、好きな人がいると明かされた紗良は口をあんぐりと開けた。
「や、でも!!確かにそう言いましたけど、こんなタイミングで実は好きな人がいますって聞かされるこっちの身にもなってくださいよ!!」
紗良はアワアワしながらこれから自分が取るべき行動を模索した。
(やっぱりルームシェア解消!?また新しい同居人を探さなきゃ!!うわあ!!それにしても相手は誰なんだろう?やっぱり木藤さん?気になる!!)
色んな情報が頭の中に渦巻いて、挙動不審に陥る。
ラベンダー畑を鑑賞するどころではなくなった紗良にトドメが刺さる。