※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「綺麗ですね……」

 紗良と静流は順路に従って傍の小道を進んでいった。
 風が吹きスカートと髪が巻き上がる。風が吹くたびに紫色の絨毯が波打ち、ラベンダーの香りが濃くなっていく。

「ねえ、静流さん。車の中で考えていたんですけど……紅茶フロートなんてどうでしょう?」
「紅茶フロート?」
「コーヒーフロートみたいに紅茶にアイスクリームを浮かべるんです。片岡さんの牧場で食べたミルクジェラートなら、お紅茶に合うと思うんです!!うちに帰ったら試してみません?」

 そう提案すると静流は耐えかねたようにクツクツと笑い出した。

「ククッ。はははっ!!紗良さん、車の中で静かだと思ったらそんなことを考えていたんですか?」

 紅茶フロート以外のことも考えていたのに、笑われるのは心外だった。

「わ、笑わないでくださいよ!!」

 紗良は頬を膨らませ静流に猛抗議した。

「笑ったりしてすみません。紗良さんはどこに行ってもブレないなあと思ったら、つい……」

 謝ってはいるものの静流はまだ余韻を噛み締めていた。五分ほどしてようやく笑いが収まる。

「今日はついて来てくれてありがとうございました。私ひとりではとても来られなかった」
「仲直りできて良かったですね」
「はい」

 静流の晴々しい表情を見て、紗良は嬉しくてたまらなくなった。
 予定調和だと誰かにバカにされたって嬉しいものは嬉しい。

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