※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。
「行きたいところがあるのですが、この後お付き合い頂けますか?」
「どちらですか?」
ホームセンター?スーパー?ベッドを買うならインテリアショップだろうか。紗良の予想はどれも外れた。
「ジュエリーショップです。結婚指輪を買いに。もちろん代金は私がお支払いします」
(あ、そうか。私、高遠さんの架空の妻になるんだった……)
引っ越しにばかり気を取られていて、彼のもう一つの目的の方をすっかり忘れてしまっていた。
「架空の妻になるというお話でしたが、具体的にどういうことをすればいいのでしょうか?」
「私と出掛ける時は指輪をしてください。仕事中やご友人と会う時は外して頂いて構いません。妻役が必要な時には芝居にお付き合いいただくかもしれませんが、あとはいつも通りに生活してください」
(なーんだ……。結構簡単じゃん)
何をやらされるかと思えば、指輪をつけて静流の話に辻褄を合わせておけばいいだけか。簡単だ。
「あと、私のことは普段から静流と呼んでください」
「じゃあ、私も紗良でいいです」
「遅くならないうちに出掛けましょうか」