※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「おはようございます、紗良さん」
「おはようございます」

 手を握りあった翌日、何とも言えない気恥ずかしさを心の内に秘めながら変わらぬ朝を演じる。

「今日はスピカに行くんですよね?」
「はい」

 この日は日曜だったが、店内にある物品の棚卸しを手伝って欲しいとのことで弥生から出勤をお願いされていた。

「私も今日伺っていいですか?紗良さんの考案した紅茶フロートをぜひ食べさせてください」
「はい!!来てください!!何時ごろ来られます?」
「お昼を済ませてから行くつもりなので、十四時頃ですかね」
「わかりました」

 紗良は静流の訪問を快諾した。
 朝食を食べ終わると出掛けるまで時間があったので、洗濯と自室の掃除を済ませる。
 家事を終えてもなお時間が余ったので、吊り戸棚の中の紅茶缶でも整理しようかと思ったその時、紗良のスマホが鳴った。

「もしもし」
『紗良ちゃん!?』
「どうしたんですか?」
 
 電話の相手は弥生だった。既にスピカの営業時間に突入しているはずだが、電話を掛けてくるなんてどうしたのだろう。

『お願い助けて!!こ、紅茶フロートの注文でお店がパンクしそうなの!!』
「えーーー!?」

 弥生からの緊急要請を受け、紗良はとるものもとりあえず直ちにスピカに急行した。

「紗良ちゃん!!よかったーー!!手伝って!!」

 紗良がやって来ると、弥生はホッと胸を撫で下したのだった。
 日曜の午前中にもかかわらず、店内は満席だった。紗良が働くようになってからこんなことは初めてだ。

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