※エリート上司が溺愛する〈架空の〉妻は私です。

「あ、そろそろ花火が始まる時間ですよ」
 
 セットしておいたスマホのアラームが花火の開始を知らせた。
 ベランダには既に四人分の折りたたみチェアとお酒が用意されていて、花火見物の準備は万端だった。
 最初の一発目が打ち上がると、ベランダのあちこちから歓声が上がった。マンションの住人同士、皆同じことを考えていたのだろう。
 焼きたてのピザをつまみ食べながら、お酒を飲み、一定の間隔で空に打ち上げられていく花火を眺める。
 紗良はひとりだけジュースを飲みながら、しみじみと思った。

(この四人で花火を見るなんて変な気分……)

 去年の今頃はまだ静流と出逢っていなかった。ほのかが出て行ってしまってから数ヶ月が経ち、紗良は一人でオムライスを食べながら花火の音に耳を澄ませていた。

 それが、今では……恋人なんてものまでできてしまって。

 花火が弾ける瞬間、淡い光が隣に座る静流の顔を照らしていく。
 ふと目が合うとふわりと穏やかな笑みが向けられ、肘置きに置いていた手に手を重ねられる。
 ほのかも遼もいるのに、静流の悪戯は止まらない。手を重ねただけでは満足できないのか小指同士を絡ませていく。すりすりと指をなぞられ、ゾワリと背筋が泡立った。

(あ……)

 甘い予感に期待が高まり、息が止まりそうになる。
 もし、この場にほのか達がいなかったら、紗良は静流にキスをねだっていたことだろう。
 紗良さんと、甘い響きで囁いてもらい髪を撫でられ、そして……。
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